移民のデモ

アメリカの移民規制法案に反対する移民のデモが激しさを増している。一部では数十万人規模になっているとか(http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200604100014.html)。
そもそも、不法移民を今まで積極的には防いでこなかった経済的な構造があると思う。一言で言うと彼らは現代の奴隷だろう。


製造原価を下げようと思うと、安い人件費の獲得にいつかは行き着く。国際化した企業ならば海外に拠点を置く事を考えるが、業種によっては安い人件費を国内で確保する必要に迫られる。建築業などはいい例だろう。現場に人が必要だからだ。鮮度が要求される食品製造業なども同様かもしれない。
そのような場合、不法滞在外国人はうってつけだ。雇用される側に弱みがあるため、安い賃金を呑まざるを得ないからだ。雇用側と被雇用側の利害が一時的には一致する。雇用関係が当然そこに発生する。


不法なのだから出て行けと突然言われても、一旦生活の基盤を築いてしまうとそう簡単にはいかないだろう。既得権とでも言うべきなのか、そこに根付いてしまえばそれを手放す気にもなれないだろうし。
さらに疑問なのは、不法な雇用を実施してきた企業側の責任は問われないのかということだ。被雇用側ばかりを責めるのはおかしいと思う。不法な雇用をした側にも落とし前を付けさせる、つまり、次の生活基盤を作るための補償(日本で言うなら会社都合の退職金支払いか)を行った上で国外追放というならまだわからなくはない。


そもそも、不法滞在者であったとしても最低賃金を保証するよう企業に求めてこなかったのではないのか? 言葉も通じない国外者と自国の人間を較べて、いずれでも同じ賃金を保証するように企業に求めれば、不法滞在者を雇用するはずがなかったと思うのだがどうだろう? 基本的人権という観点から言えば不法滞在者であっても最低賃金は適用されるべきだろう。それを放置してきたのは、現代版の奴隷として彼らを扱ってきた政治があったからではないのかと想像してしまうのだ。それ以外に、数百万人という不法移民が生まれた合理的な説明を私は思い付かない。


★今回の法案のもうちょっと詳しい説明はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/Biribi/20060409


※カリフォルニア南部に位置する食品製造会社のシステム開発のため数ヶ月常駐したが、事務職以外の職員は掃除のおじさんを含めて全員ヒスパニック系で、彼らのほとんどは英語を解さなかった。「俺は日本から来た」という簡単な英語すらだ。挨拶もハローではなく「コムスタ」「ムイ ビエン」(スペイン語)なのだ。カリフォルニアでは元々、公用語に近いぐらいスペイン語が使われているらしい。